「水星の魔女」の感想

本当の本当に今更なんですけど、アニメ「水星の魔女」よかったですね!!
放送を追いかけている間もドキドキして楽しかったけれど、それ以上に時間が経ってからふとあのとき彼らはどんな気持ちだったのかな、と考えてしまったりもして。
Twitterの下書きにそのときのメモがたくさん残っているので、それを元に感想を記録しておきたいと思います。

エラン(4号)

4号と呼ばれる彼は「水星の魔女」という物語のための人柱のような存在になってしまった、と思って、そう自分が思ってしまったことがさらに悲しくて、切なくて、やりきれない思いがずっと残っています。

スレッタとの再会のシーンでは泣いてしまいました。
せめて彼がずっとずっといい夢をみられることを願っています。

グエル

まさに王道の貴種流離譚!
外の世界を知って一回りもふた回りも大きくなって帰ってきた、生まれながらの王子様。
すごく魅力的な人なのに(魅力的すぎるからかもれないけれど)、彼に対しては「最後までなんだか仲良くなれなかった同級生に対する気まずさ」みたいなものを感じています。

でも、ジェターク家のとりあえずMSで出撃!前線に出る!拳で語り合う!!な姿勢はけっこう好きでした。
同じパイロット科所属でも、サリウスに後継者として実務経験を積ませてもらっていそうなシャディクに対し、本当にMSのことしかやってこなかったんだろうなと感じも好き。
むしろ、最終回後にむちゃくちゃ苦労して会社を立て直すスピンオフがもっと見たいです。

スレッタ

最後の最後までスレッタはお母さんのことが大好きで、めちゃくちゃ頑張って世界を救った結果手に入れたのが「お母さんもエリクトもミオリネも友達もみんな一緒にいられる未来」だったっていうのが切ないな、と思いました。

毒親育ちの子供(適切な言葉が見つからないので乱暴な言い方になりますが)が一度は夢みる「お母さんがやばい人だっていうことは分かってるんだけど、どうにかしてやさしいお母さんになってくれないかな。嘘でもいいからひどいことしてごめんねって謝ってくれないかな。みんな一緒に仲良く暮らせないのかな」みたいな願望が全部叶ったね、という切なさ。
それは現実の世界でもなかなか叶わないことだから、スレッタの視点で見ればハッピーエンドだったのかもしれないとも思います。

でも、お母さんの1番は永遠にエリクトなんだっていうことを受け入れられたのは、ミオリネがスレッタの1番でなってたからだし、ミオリネもスレッタを1番に想ってくれてたからだよね。スレッタは1度もプロスペラに怒ったり文句を言ったりしないんだよ。そんなことをしても意味がないって知ってるから。
嫌われちゃうだけ、遠ざけられちゃうだけなんだって想像できるもんね。
だから、スレッタの隣にプロスペラに心の底から怒ってくれるミオリネがいてくれて本当によかったなと思います。

スレッタのすごいところは、最初から最後までミオリネのことをだたの「ミオリネ」として認識していることですよね。
総裁の娘だと知っても、母の仇だと知っても、ミオリネに対する見方や態度を変えたりしないし、葛藤したりしない。
まっすぐにミオリネのことを愛して、信じている。
それはきっとミオリネが一番求めていたことで、そうやってお互いの足りないところを補い合っているようなスレッタとミオリネの関係性が好きです。

ミオリネ

「貴族の女性は気位が高く、夫にも簡単には心を開かないし気安い態度をとらないのが普通」と源氏物語に教わったので、ミオリネの言動のキツさはすべて貴族女性特有の気位の高さの現れなのだなと思っていたし、何よりも大切だったプライドを捨ててスレッタを守ろうと奔走する姿はいじらしいなとずっと応援していました。
「これは私の喧嘩よ!」とエアリアルに乗り込むようなところ、最高!
正直に言ってタイプの女性です。

さんざん利用され罪をなすりつけられたのに「家族になるんだから!」と言えてしまうミオリネは本当にすごいと思います。
多くの場合、スレッタの立場に立たされた人はプロスペラかミオリネのどちらかを選ばなければならなくなるはずです。
でもスレッタがプロスペラを大好きなことを知っているから、プロスペラごと引き受けてしまうなんて、大きい愛の持ち主だなぁ……。

(あんまり褒めたくないけれど、「スレッタだけはやめておきなさい」みたいなことを1回も口に出さなかったデリングもすごいと思ってます。ヴィムなら言ってそう。)

シャディク

この人のことをこんなに好きになるつもりはなかったんですけど、気づいたらとても好きになってしまっていました。
たぶん、地球寮VSグラスレーの団体戦のあたりが決定打でしたね。
シャディクについてはここに書ききれないので、別の記事にまとめようと思っています。

エリクト

上手く言えないんですけど、エリクトのことがすごくすごく好きです。
強くてやさしくてチャーミングで、きっと大きな傷が彼女にもあるはずなのにそれを感じさせることは1度もなくて、誇り高き戦士のようで。

小さい頃から母親がぼろぼろになるまで戦う姿を間近で見てきて、自分自身のためというよりは母親のために最期まで復讐に身を投じるつもりでいたんだろうなと思います。
それ以外の選択肢がそもそもエリクトには用意されていなかった、とも言えますが。

だからこそ、スレッタは連れて行かないと決めたエリクトのやさしさには胸を打たれました。
(し、スレッタを自由にしたことによってプロスペラの計画が破綻してしまったのが悲しくて美しい。)
最終話はエリクトにとってハッピーエンドなのか分からないけれど、母親と復讐する以外の選択肢が与えられたことはきっとよろこんでもいいですよね。
ガンド医療が発達したらエリクトの体くらい用意できちゃいそうですし、未来に期待したいです。

まとめ

「水星の魔女」を見ていて一番感じたのは、「呪い」と「祝福」は同質のものであるということでした。
人を殺す呪われた兵器だったガンダムを人の命を救うガンド医療へ、ガンダムを操る悪い魔女たちを優しい魔法使いへ、何もできなかった自分をできることをやる自分へ。
そうやってかけられた呪いをひとつひとつ祝福へと読み換えてこの世界を生き延びようとする、ある種のサバイバル術のようだなと思いました。

どんなに愛していても関わり方が適切でなければそれは「呪い」になり得るし、「呪い」になってしまった言葉の真意を知ったとき再び「祝福」に変わり得る。
愛と呪いと祝福のこの関係性を思春期のうちにうっすらとでも理解できたら楽になる人も多いんじゃないかな。

あと、グエル→ミオリネ・シャディク→スレッタ・エラン4号→スレッタが自分と同質のものを相手に見出して恋をしているように見えるのに対して、スレッタ⇄ミオリネが相手の異質な部分に惹かれてお互いを補い合う関係になれた、という対比も面白いなと思いました。
そのうち小説版も読めたらいいな。